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「島」 第五回(全五回)

書き手:イトウ

社会人1年目のある日の業務中、あまりに暇なので書いた糞文「島」を転記する最終回です。

第一回はこちら
第二回はこちら
第三回はこちら
第四回はこちら

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 H男は庭で母と一緒に流しそうめんを食べている。普段は蛸壺を海に沈めて漁をしている。あれから後もS江は見つからなかった。
 
 母は狂ってしまっていた。というか島全体が狂っていた。捕った蛸を卸す市場の人に聞いたが、H男の島の人間はある日突然気球に執着するようになったらしかった。
 時を同じくして島の人間は「気球人」なるモノを語ったが、「そんなモノはおらんじゃろう」というのが外部の人達の見方だったようだ。
 どうも何かの拍子に島全体が狂ってしまった様だった。

 あの沢山あった気球はおそらく島民が作ったものだろう。そして広島東洋カープは来年優勝するだろうし、UFC62ではタンクアボットが減量してウェルター級でヒューズと戦うだろう。

 ではあの晩飛んでいった気球に乗っていた一つの人影は誰だったのか・・・。島民の中で行方不明なのはH男の妹S江だけなのだった。

 H男は夜になると時々考えた・・・。S江は狂っていたのか、と。今、それを知る事は出来ない。だが、S江はどこかで生きているという確信はなぜかあった・・・。
 母は相変わらず青い顔をして便所に二時間籠もる毎日だ。

 それから約400前、関ヶ原では東軍西軍が睨み合っていた。

(了)
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「島」 第四回(全五回)

書き手:イトウ

社会人1年目のある日の業務中、あまりに暇なので書いた糞文「島」を転記する第四回です。

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 麓に着くと、H男は兜岳を見上げた。
「もしかしたら命を落とすかも知れんのう」
 饅頭の皮とあんこを丁寧に分けながら足下を見ると、そこにはサングラスをした白骨死体が転がっている。
 賢明な読者ならこの白骨死体が誰のものなのか、もうお気付きだろう。そう・・・これはもちろん”ル・クプル”のギターの人の死体だ。
 
 H男は黙々と岳を登っていく。すると、目前に見えてきたのは数多の気球だった。停泊している気球の一つ一つを見てみるが誰もいなかった。
「S江ー!S江ー!」
 呼べど叫べと返ってくるのは木霊のみなのであった。

 捜索は数時間に及んだ。気が付くと日は落ち始め辺りは薄暗い。H男はその日の捜索を断念し、一旦家に戻ることにした。だが、岳を半分ほど下りたその時、彼の背後でバサリと大きな音が鳴った。

 H男が振り返ると、大きな大きな一つの黄色い気球が木の葉を振り落としながら、ゆっくりと紺色の空へと吸い込まれていくところだった。
 一つの人影をぶら下げた気球は少しずつ小さくなりフワフワと真新しい夜空に消えていく。

 H男は打ち付けられた杭の様に佇み、それを見つめた。彼の手からゲームボーイアドバンスがこぼれ落ちた・・・


(続く)

「島」 第三回(全五回)

書き手:イトウ

社会人1年目のある日の業務中、あまりに暇なので書いた糞文「島」を転記する第三回です。

第一回はこちら
第二回はこちら

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 H男は前回の事が嘘の様にすんなりと柳井港に着いたが、何しろ金が無い。野球ホームレスとして稼ぎに稼いだ数億という金のほとんどは焼き肉へと流出し、「金を物に換えておこう」という目論見で購入した奴隷15人は火事場へ急ぐ梯子車に轢かれて一人もいなくなっていた。

「泳いで渡るしかないのう」

 決心したH男は全裸で海に飛び込んだ。さすがは元海の男。スイスイ泳いでグングン進む。スイスーイ、グングーン。
 あっという間に故郷の島まで着いてしまった。

 が、様子がおかしい。妙に静かだ。島で唯一の駄菓子屋から炊き込みご飯の匂いが吹き出し、その匂いが島全体を覆っていて、息をするのも辛い。
 道には炊き込みご飯の匂いにやられて失神している老婆が転がり、足の踏み場も無いほどだったが、それでも老婆の裸体を乗り越え家へと向かった。

 数年ぶりの我が家は、一見したところでは少しも変わらなかった。
「ただいまー。かあちゃーん。かあちゃーん」
 シーン・・・。
 返事が無い。
 家全体を捜してみたが、S江の姿も母の姿もなかった。H男は腹が減っていたので庭で流しそうめんをして食べたのだが、一向に母が帰ってくる様子も無い。しょうがないのでマジックで足の裏に顔を描いたり、庭でのたうち回ったりして遊んでいると誰かが家の中へ入ってきた。

 それは変わり果てた母の姿だった。麦わら帽子の上にさらにニューヨークヤンキースのオフィシャルキャップをかぶり、たっぷりと髭を蓄えた母を初め母だとは思えなかったが、それでも耳の裏に入れてある「メリルリンチ」という入れ墨を見る限り母なのだろう。
母は久しぶりの息子との対面であるにも関わらず、無表情だった。そして
「S江なら連れてかれたよ。気球人達にね。今戻ってきても遅いよ。もう全ては終わっ てるよ。はっきりいって超ウゼーよ。生きるってかったるいよね」
 と厭世的なセリフを何の臆面もなくつぶやいた。

「気球人?」
 H男は聞き直した。

「そうさ。1年前に気球に乗ってこの島にやってきたんだ。兜岳を根拠に島中を荒らし回っているよ」
 と言うやいなや、真っ青な顔をして便所に駆け込んだまま二時間も出てこない母の事は放っおく事にして、H男は島内最高峰の兜岳へと向かった。S江はそこにいるかもしれない・・・。


(続く)

「島」 第二回(全五回)

書き手:イトウ

社会人1年目のある日の業務中、あまりに暇なので書いた糞文「島」を転記する第二回です。
第一回はこちら

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 それから二年が経った・・・。あの激走の途中H男は道を間違え、今は鳥取でホームレスをしていた。
 財産は現金数億円とバットとグローブと硬球が二つだけだった。全国初の野球ホームレスとして、西日本ではそこそこ知名度が出てきていたH男だったが、やはり故郷は愛しかった。
 当時大阪では近鉄バッファローズが名前を近鉄マイマインズに変え隆盛を誇っていたが、そんな事はこの物語をほとんど関係ないのでここでは省略する。

 いきなり話しはズレるが、それから約400前、関ヶ原では東軍西軍が睨み合っていた。

 話しは戻るがH男が山陰本線のガード下でいつもの様に焼き肉を食べていると、目の前に幻覚が現れた。
 それは島に残してきた妹のS江だった・・・。背中に大きな篭をしょっている。ミカン畑に行く時の格好だった。
 そういえば、もうそろそろミカンの収穫の季節だ・・・。S江も今では高校生になっているはずだ。島には高校は無いから毎日船で柳井まで出ているのだろう。もう、中学の頃の様に学校から帰ってきて、母のミカンの収穫を手伝う事は出来ないかもしれない・・・。
「ワシが帰らにゃあのう」
 静かに焼き肉を平らげると、野球ホームレスと今日かぎりで決別する事を誓う意味も込めてバットとグローブと硬球二つを天に向かって放り投げた。
 その硬球の内の一つは思いのほか弾み、帰宅途中のサラリーマン檜田義之(39歳)のポケットの中にスルリと潜り込み、家に帰ってその硬球に気付いた義之は
「なんでポケットに硬球が・・・。これは神の思し召しだ!俺は選ばれたんだ!プロ野球選手を目指すぞー!」
 と叫び、次の日には会社に辞表を出し、日夜特訓に励んだがちっとも芽が出ず、代わりにがんばりすぎて目が出て、担架を拒否しヨロヨロと救急車まで歩いて行こうとする気概を見せたが辿り着けず、結局担架のお世話になり、貯金は尽き果て、長男は餓死し、女房は鳥取発戦場行の高速バスに乗ってしまい、一家は崩壊した。
 当の義之はそれでもまだプロ球界に執着し、入院先の病棟の窓から煉瓦を落としているのを婦長に見つかって消化器で殴られた。

(続く)

「島」 第一回(全五回)

書き手:イトウ

かなり昔に書いた糞文がフロッピーディスクから少し出てきた話は前に書きました。
自分で読み返してみて「あーなんかこんなん書いた気がする。夢じゃなくて現実での妄想じゃったんか」と当事者にしか分からない妙な感動を覚えています。論理的タイムカプセルです。
基本的に転記するだけなので更新がラクです。

今回転記は「島」という短編。社会人1年目のある日の業務中、あまりに暇なので書いたものだと思います。多分一行ごとに適当に考えながら書きました。
日中、しかも業務中にシラフでこんなものを書いていたと思うと、病名付けられても抗弁しづらいですね。

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 H島は瀬戸内海に浮かぶ無数の島々の中の一つである。
 そこで漁師を営むA本H男は25歳の時、一旗揚げようと思って単身大阪へ赴き、素早く挫折して田舎へ引っ込んできた男であった。
 挫折した理由は多々あれど、一番の理由は目が痛い、腰が痛い、鼻が痛い、くるぶしが痛い、痛い痛いの”痛いづくし”で、「こんなに痛いんなら島に帰ろう。帰ろう。島には母とS江がおるし。」と独り言を言い言い、帰る決意を固めたのだった。S江とは彼の妹である。

 しかし、彼にはお金がなかった。島へ出ている一日二便の客船の運賃は2600円だったが、それすら払えないばかりか、大手暴力金融数社から多額に渡る借金を作ってしまっていて、唯一の財産である折り畳み自転車をも手放さなくてはいけないかもしれない状況だったのだ。
 もちろん、H男はそんな大借金は踏み倒すつもりだったし、島に逃げればどうにかなると本気で思っていた。そこで思いついたのが島まで泳いで帰るという計画だった。山口県の柳井港から島までは船で2時間。まあ泳いでざっと10時間というところだ。
「イケる。」
 H男は確信した。すぐさま折り畳み自転車で大阪市住吉区を出発し、とばせとばせで翌日には広島と岡山の県境笠岡市まで来ていた。
 そこで予期せぬ事態に陥った。折り畳み自転車が折り畳まったまま、元に戻らなくなってしまったのだった。
 電車賃も無い、食費も尽きてきた。盗みはしたくない。走るしかない。折り畳み自転車を海に放り投げ、H男は走った。
 腹が減ったらそこら辺にある土や発砲スチロールを食べ、邪魔する小学生をヘッドロックで極め電柱に打ち付け溝に押し込め、牛や豚や鶏を無茶苦茶に殴り飛ばし、畑に植えてある収穫期に至ってない大根や人参を根こそぎ引っこ抜いて段ボールに詰めて農家に無断で全国に出荷し、力の続く限り走った・・・。

(続く)

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