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ハローハローワーク 第5回

そんな中、勝手に大田市へ取材旅行に行っていた太郎のデジタルムーバが久しぶりに震えた。
それは、両親からの連絡だった。
「そろそろ月へ帰るで。」とのこと。
そう、太郎は月面に生息する宇宙人であった。

主に専用家畜のウサギに餅をつかせることで月の運営を行っていたが、ウサギが1匹しかいないこと、そのウサギが最近手に入れた「ナニワ金融道」を読んで以来、労働条件に関してブツブツ文句を言うこと、また、餅がそこまで需要がないことから、太郎一家が地球へ新事業の開拓を模索しにきていたのだった。

しかしながら、地球についてすぐ、太郎の両親は新事業の開拓を放棄。
ローソンで立ち読みした「パチスロ必勝ガイド」で得た知識を元にパチプロ生活に突入していった。
そんな甘い考えで地球の生活を維持できるはずもなく、じきに太郎の両親は生活を支えることが困難となり、母吉江が、昼間はパン工場で働き、夜はスナックで働いた。

父善次はギリギリまで働くことを拒否していたが、晩御飯のおかずのお皿をテーブルに置く妻の手の無数の皺を見ると、本人の意思とは関係なく口からそっと「苦労をかけるなぁ」とボソッと言葉を漏らした。

次の日から善次は河岸工事のバイトで汗を流した。幾許かの日当を手にするようになった。
もともと真面目で勤勉家であった善次は数ヵ月後には、現場監督として多くの部下に慕われるほどの存在となっていた。
部下の勧めで購入したセルシオに乗りながら、善次は地球に来た目的をすっかり忘れていた。

息子の太郎には、公務員になってほしいと願った善次は、太郎が幼い頃から塾に通わせ私立の進学校に進学させたが、物心がついた太郎は、登校拒否児となり次第に学校に通わなくなった。

親の希望を押し付けすぎたのが原因かも知れないと考えた善次は、その頃の太郎に対し、強く意見することができなかった。

強く意見することの出来ない善次の心の弱さが、更に太郎の心の闇を深くしていった。
そんな太郎の定期購読雑誌は「バンドやろうぜ」と「デラべっぴん」だった。

母吉江は、以前と変わらず、昼間はパン工場、夜はスナックで働いていた。スナックでは雇われママになっていた。
雇われママという中途半端な立場に満足できなかった吉江はオーナーにスナックの経営権の譲渡について話し合いを幾度かもったが、話は平行線を辿り、結論はでなかった。
3度目の平行線の話し合いを終えた後、お店に出る気力もなくそのまま帰宅した吉江は、ふと鏡に映る自分の姿を見つめた。

「こんなに歳を取っちゃって、私ももうおばさんね」
そのとき、そっと後ろから善次が吉江を抱きしめた。
「よく頑張ってくれたよ。もう帰ろう」
吉江は少し泣きながら、首を縦に振った。

そして、数年前、
「アジアを代表するアーティストになります。」
と、書き置きを残して型落ちのデジタルムーバを持って出かけた息子太郎に電話をかけた。

執行猶予中の田所健太郎君(25歳)が、ビル解体工事で手にした週払いの給料45000円から、
風俗店「亀頭センチメンタル」にて、45分昇天笑点コース12000円コース選択し、人気ナンバー3のペティちゃんから濃厚なサービスを享受しながら、新たな人生を模索していたそんな時、北西に小さい発光体が月に向かって飛んで行った。

目撃者はハローバイバイの関のみだった。
そして、その目撃証言は、都市伝説になることはなかった。

その2分後、執行猶予中の田所健太郎君(25歳)は、ペティちゃんというロケットに乗って昇天した。

-----完-----
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