スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

加速な女

喉元を過ぎたが、まだ熱い。
このうどんは、熱すぎる。

最近、近所の坂の上にできたうどん屋をずっと気にする生活を送り、
漸く訪れることができたわけだが、どうにもここのうどんは熱い。

私の座っているカウンター席から3つ離れた席で、きつねうどんと親子丼を食している
推定年齢30歳、推定体重89キロ、推定職業「ニートに片足つっこんだフリーター」であろう
眼鏡の青年も、額から滝のような汗をかきながら、少しむせてうどんをすすっていた。
離れた席から彼を眺めていると、彼の背中から水蒸気が立ち上っていた。

舌をしこたま火傷した私は、舌の上のヒリヒリを口に含んだ水道水でごまかしながら、
うどん屋を後にした。

帰路の途中ですれ違った20歳前後の女性が、「出る単」の上位100単語を絶叫しながら、
電気自転車で坂を下っていった。
夏休みを持て余した小学生たちがその女性の真似をして「アブソリューーーーート」と言いながら、
友達とじゃれあっていた。

「アブソリューーーーート」と言いながら、坂を下っていた電気自転車の女性は、
坂を下ったタイミングで、重量2.6トンの引っ越しトラックと接触した。

電気自転車を残して、マンガのように女性は
「距離、10メートル40センチ」「角度、40度」で宙を舞った。

宙を舞った女性の着地点に2日後のイベント
「大豆の豆~日本人の底力~」で使用する高さ2メートル、幅2メートル、
奥行き2メートルの巨大な豆腐があった。

女性の頭部全てと右肩が、豆腐に刺さった。
女性は「うぅ」と声を上げたまま2分ほど動かなかった。

私は、思いがけない光景に呆けていたが、
正気に戻ってすぐショルダーバッグの小ポケットから携帯電話を取り出し、「119」と順にプッシュした。
そのとき、女性の右肩がぴくっと動いた。

右肩が動いたと思ったその刹那、女性は何事もなかったのように豆腐から体を抜いた。
豆腐には女性の型が綺麗に残っていた。

髪に付いた少量の豆腐を掃って何事もなかったかのようにその場を立ち去ろうとする彼女に
私は言った。

「あそこに電気自転車忘れてますよ。」

すると、彼女は肩に付いた豆腐を左手で掃いながら私に、「ありがとう」とはにかみながら言った。

後ろで、「大豆の豆~日本人の底力~」実行委員会の田中正治氏(45歳)が、
豆腐の現在の形状に対して、不満を述べ、裁判をも辞さない覚悟を空に向かって叫んでいた。

彼女は電気自転車に颯爽と跨り、「トラディショーーーーーン」と叫びながら、去って行った。

私は見えなくなるまで彼女の白いワンピースの背中部分を凝視していた。
スポンサーサイト

 | HOME | 

Calendar

« | 2009-09 | »
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

Monthly

Categories

Appendix

hakkan_staff

FC2ブログへようこそ!

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。