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「残暑の九月」

書き手:イトウ

前回転記した「ある話」の他にもフロッピーからいくつかの糞文が出てきました。
転記するだけなのでこりゃ更新がラクです。
はずかしくて死にたくなる感じもなかなかエエです。

「ある話」と同じく人に「なんか書いて」と言われて書いた文です。書いた時期は「ある話」とほぼ同じ10年くらい前で21歳か22歳のころだと思います。

   *   *   *   *   *

 「残暑の九月」

 随分長い間こうしているような気がする……。だが頭の中に、赤くネバネバした不思議な液体がまとわりつき、一体いつからこうしているのか判らない。
「暑い…。」
確かにこの日は暑かった。九月の太陽がアスファルトを焼き、立ち昇る陽炎が彼の思考をさらにボンヤリさせる。気だるさが全身を浸食していくのを自覚し始めた時、彼は通りを歩く人々の自分に向けられた視線に気がついた。立ち止まって訝しげに見る人もいる。
「嫌な奴らだ。」
神経質な彼は、この流行りの店が立ち並ぶ賑やかな通りを歩く若者が嫌いだった。脳天気で、騒がしく、けばけばしい。それに平気で道端にゴミを捨てる。くそったれがと思いながら視線を若者から移すと、一軒のオープンカフェが彼の目にとまった。涼しげなテラスに客はまばらだ。彼は喉の渇きを自覚し、よく冷えたアイスコーヒーが飲みたいと思った。遠くの方で、救急車のサイレンが鳴っているのが聞こえる。

 ひどく空気が悪い。交通量が多いせいだ。彼は自宅の近くをはしるこの通りがかつて好きだった。しかし道路の拡張工事が行われ交通量が激増した今の通りに昔の面影は、まったくなかった。

 立ち止まって彼を見る人が増えてきた。既に彼を中心とした人の輪になりつつある。
「どうしたんだ。なんでみんな俺をみるんだ。」
彼は不安になった。随分まえから立ち止まっていた一人の女性が、隣に立っているもう一人の女性に説明するように話していた。そして「轢かれた」「飛び出した」「逃げた」などの単語が彼の耳に入ってきた時、彼は思い出した。
 
 その女性をゆっくりと見上げる。焼けたアスファルトが、固まりかけた血液とともに彼の頬に張り付く。そのアスファルトの上には、あるはずのない水たまりがあるようにみえた。

「氷が沢山入ったアイスコーヒーが飲みたい」

 サイレンがさっきより近くで聞こえる。赤くネバネバした不思議な液体が、彼の感覚を完全に覆った。

 九月にしては暑すぎる日だった。 

(了)
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