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「島」 第三回(全五回)

書き手:イトウ

社会人1年目のある日の業務中、あまりに暇なので書いた糞文「島」を転記する第三回です。

第一回はこちら
第二回はこちら

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 H男は前回の事が嘘の様にすんなりと柳井港に着いたが、何しろ金が無い。野球ホームレスとして稼ぎに稼いだ数億という金のほとんどは焼き肉へと流出し、「金を物に換えておこう」という目論見で購入した奴隷15人は火事場へ急ぐ梯子車に轢かれて一人もいなくなっていた。

「泳いで渡るしかないのう」

 決心したH男は全裸で海に飛び込んだ。さすがは元海の男。スイスイ泳いでグングン進む。スイスーイ、グングーン。
 あっという間に故郷の島まで着いてしまった。

 が、様子がおかしい。妙に静かだ。島で唯一の駄菓子屋から炊き込みご飯の匂いが吹き出し、その匂いが島全体を覆っていて、息をするのも辛い。
 道には炊き込みご飯の匂いにやられて失神している老婆が転がり、足の踏み場も無いほどだったが、それでも老婆の裸体を乗り越え家へと向かった。

 数年ぶりの我が家は、一見したところでは少しも変わらなかった。
「ただいまー。かあちゃーん。かあちゃーん」
 シーン・・・。
 返事が無い。
 家全体を捜してみたが、S江の姿も母の姿もなかった。H男は腹が減っていたので庭で流しそうめんをして食べたのだが、一向に母が帰ってくる様子も無い。しょうがないのでマジックで足の裏に顔を描いたり、庭でのたうち回ったりして遊んでいると誰かが家の中へ入ってきた。

 それは変わり果てた母の姿だった。麦わら帽子の上にさらにニューヨークヤンキースのオフィシャルキャップをかぶり、たっぷりと髭を蓄えた母を初め母だとは思えなかったが、それでも耳の裏に入れてある「メリルリンチ」という入れ墨を見る限り母なのだろう。
母は久しぶりの息子との対面であるにも関わらず、無表情だった。そして
「S江なら連れてかれたよ。気球人達にね。今戻ってきても遅いよ。もう全ては終わっ てるよ。はっきりいって超ウゼーよ。生きるってかったるいよね」
 と厭世的なセリフを何の臆面もなくつぶやいた。

「気球人?」
 H男は聞き直した。

「そうさ。1年前に気球に乗ってこの島にやってきたんだ。兜岳を根拠に島中を荒らし回っているよ」
 と言うやいなや、真っ青な顔をして便所に駆け込んだまま二時間も出てこない母の事は放っおく事にして、H男は島内最高峰の兜岳へと向かった。S江はそこにいるかもしれない・・・。


(続く)
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